私が「柔軟な働き方制度」を導入するわけ― 生産性を最大化するために“人がコントロールする余白”をつくる ―

こんにちは。テオドール株式会社 代表の西村です。

今回は、私が経営者として「柔軟な働き方制度」を導入している理由についてお話しします。
近年、“働き方改革”という言葉をよく耳にしますが、私はそれを「時代の流れだから」導入しているわけではありません。

制度の目的は働きやすさの追求ではなく、生産性の最大化
そして、それを本当に機能させるためには、トップが常に意識・目的・目標を発信し続けることが欠かせません。

柔軟な働き方は「優しさ」ではなく「戦略」

当社では、

  • 残業ゼロ(基本的に残業はしない)
  • リモートワーク制度(家庭や子育て状況に応じて)
  • 短時間勤務制度(勤務時間の柔軟な設定)
  • 裁量性の付与(各自が自分の時間を管理)
    などを導入しています。

こうした制度は、単に“社員に優しい”仕組みではなく、
組織全体の生産性を高めるための仕組みです。

時間や場所に縛られない働き方は、
社員が最も集中できる環境で力を発揮できるようにするため。
そして、限られたリソースで最大限の成果を上げることが、企業の持続的な成長につながると考えています。

働き方の柔軟性は「目的」ではなく「手段」

制度そのものを目的化してしまうと、「制度を使うこと」がゴールになってしまいます。

それでは本末転倒です。

柔軟な働き方は、生産性を高めるための“手段”であって、“目的”ではない。

柔軟な勤務制度を取り入れた結果、業務効率や成果が向上していなければ、その制度は正しく機能していないということです。

私が常に意識しているのは、「制度の導入」ではなく、
制度がどう成果につながっているかをチームで検証し続けること。

意識・目的・目標を“経営者が発信し続ける”重要性

どんなに良い制度も、放っておけば形骸化します。
制度を“生きたもの”にするためには、経営者自身の発信力が不可欠です。

私は、日常のコミュニケーションの中で、常に次の3つを意識しています。

  1. 意識
     なぜこの制度を取り入れているのか(背景・理念)
  2. 目的
     この制度で何を実現したいのか(成果・改善点)
  3. 目標
     短期・中期でどんな変化を目指すのか(定量・定性目標)

この3つを常に明確にし、繰り返し伝えることで、社員一人ひとりが制度の“意図”を理解し、自発的に動けるようになります。

「制度を使うため」ではなく、「目的を達成するためにどう使うか」
その考え方を根づかせるのは、経営者の役割です。

AIを活用する時代だからこそ、“人の余白”が必要になる

現在、当社では各部門でAIを積極的に活用しています。
そのおかげで、業務の生産性は大幅に向上しました。

しかし一方で、AIのスピードに合わせて仕事をすることで、
人間の脳が追いつかず、知らないうちに疲弊していることがあります。

これは単なる「忙しさ」ではなく、AIがもたらす“認知負荷”の問題です。

海外の研究では、AIの導入が効率を上げる一方で、
「テクノストレス(technostress)」が増加し、
感情的な疲労を引き起こす可能性があると報告されています。
(参考:Technological Forecasting and Social Change, 2024

つまり、AIの力を借りながらも、人間が自分のペースを守り、適切に休むことが
“生産性の持続”には欠かせません。

「スピードを落とす勇気」が新しい競争力になる

AIが人間の10倍のスピードで処理をしても、
人間の脳はそのスピードで思考するようにはできていません。

だからこそ、
「止まる時間」や「整える時間」を制度として設けることが、
長期的な成果を出す上で重要だと考えています。

私たちは、AIを導入して終わりではなく、
それを“どう使いこなすか”という視点で制度を整えています。

  • スローダウンタイム:AI導入後の人間側の休息・調整時間
  • 段階的導入:操作に慣れるまで負担を減らす仕組み
  • 心理的ケア:負荷が偏らないようメンバー間でフォロー

AIと人のバランスを取ることが、結果的に組織全体のスピードを安定させると感じています。

制度を支えるのは「文化」──トップの言葉が行動を変える

制度を設けるだけではなく、
それを運用する文化を育てることが、企業としての本当の成長です。

私は経営者として、定期的にこうした発信を続けています。

  • 社内チャットでのメッセージ発信
  • 経営理念の共有
  • AI活用の成功事例や失敗談の共有
  • 社内ミーティングでの制度運用レビュー

制度はトップの姿勢とセットで伝わる。
発信を怠ると、理念も制度もただの“社内ルール”になってしまいます。

結果として感じている変化

ここ1,2年で、社内に確実な変化が生まれました。

  • 残業ゼロの定着とともに、社員の集中度が向上
  • AI導入による業務時間の短縮
  • リモート勤務の浸透による生産性維持
  • 働く人の心理的安定とモチベーションの向上

「働く時間を減らしても成果が上がる」──
これは単なる理想ではなく、仕組みとして実現できると確信しています。

経営者として、これからの働き方を考える

柔軟な働き方の本質は、
「人がAIをコントロールできる組織」をつくることだと思います。

制度もAIも目的ではなく、
その先にある“人の創造性”や“集中力”を引き出すための手段です。

そして、それを継続させるためには、経営者が理念を語り、意識を発信し続けること。

AI時代だからこそ、
人間の“余白”をどうデザインするかが、
次の企業競争力になると私は考えています。

テオドール株式会社 代表取締役 西村幸子