「化粧品の企画はどこから生まれるのか?」18年のOEM・自社開発経験から語る“商品企画の3つの起点と成功のコツ”

こんにちは。テオドール株式会社 代表の西村です。
今回は、私が18年間、化粧品の企画・開発に携わってきた経験から、“化粧品の商品企画はどこから始まるのか?”についてお話しします。
化粧品を作りたい方からよく聞かれるのが、「企画って、何から考えればいいですか?」という質問。
実は、商品企画には明確な“起点”があり、その起点ごとに企画フローも、注意すべきポイントも異なります。
今日は、私がこれまで 自社・OEM・共同開発を合わせて18年やってきた実務経験から、企画の方向性を3つに整理して解説します。
目次
① ターゲット起点
“誰のために作るのか”から始まる企画
最も王道で、成功確率も高い起点です。
▼ こんなケース
- インフルエンサーの商品を作りたい
- 既存顧客の悩みに合わせて新商品を作りたい
- 年齢層・肌質・ライフスタイルに合った商品を提案したい
「この人たちが求めているのはこれだ」とターゲットが明確なほど企画は強くなります。
▼ フロー
- ターゲットの悩みの抽出(定性)
- “解消したい状態”の明確化
- その悩みに対して“化粧品でできる範囲”を整理
- 方向性に合わせた成分・処方・剤型を選定
- パッケージ・世界観・価格戦略を決める
▼ 注意ポイント
- 「ターゲット像が浅い」と商品がブレる
- SNSのフォロワー数だけで判断すると失敗する
- “本人の好き”ではなく“ファンが求めているもの”を中心に調整する必要あり
ターゲット起点の最大の利点は、商品に“買ってくれる理由”が最初から存在すること。
② 剤型起点
「特殊技術・新原料」から始まる企画
OEM商社や原料メーカー、研究所から「こんな素材あります」「こんな剤型できますよ」という提案から始まるケース。
▼ こんなケース
- 他にはない処方技術を活かしたい
- 市場に出ていない剤型を武器にしたい
- 成分・技術を活かしたプロダクトをつくりたい
▼ フロー
- 技術・剤型の“強み”を整理
- 「それを必要とする市場はどこか?」を調査
- 想定ターゲットを設定
- 価格帯・容量・パッケージとの整合性を取る
- 競合との差別化理由を明文化する
▼ 注意ポイント
- 技術が良くても“市場がない”と売れない
- 使い心地にクセがある剤型は、ユーザー教育が必要
- 特殊技術ほど原価が上がる→価格戦略が超重要
剤型起点は “市場にない価値” を作れる反面、マーケティングとストーリー設計が必須です。
③ 商品起点
市場の商品を見て「もっと良い形にできる」と思う企画
実は、ヒット商品はこの考え方が多いです。
私のブランド CLAYSEE SPA(クレイシースパ) はまさにこれ。
▼ 実例:CLAYSEE SPAの誕生
発売当時、クリームシャンプーは市場に出始めていたものの、
- 洗えてる感の弱さ
- 使用感の重さ
- 泡がないことへの消費者の不安
- “メリットはわかるけど、使う勇気が出ない”
という課題がありました。
そこで私は、「炭で着色しクレイのような見た目にして『落ちそう』と直感できる処方」を採用。
この“視覚で気づかせる設計”が刺さり、その後複数のメーカーからクレイクリームシャンプーが発売され、クリームシャンプー市場の拡大にもつながりました。
▼ 商品起点のフロー
- 現在の市場の商品を全部分析
- 「ユーザーが不満に思っている点」を抽出
- 改善アイデアと剤型を組み合わせて商品化
- 見た目・世界観・ストーリーを再構築
- 営業やSNSで“改善理由”を明確に伝える
▼ 注意ポイント
- ベンチマーク元が強いと比較され続ける
- “ただのコピー”と誤解されない設計が必要
- 価格・世界観・USP(唯一性)の整理が必須
起点は違っても、企画から発売までの“共通フロー”は同じ
企画の入り口は違っても、最後にやることは全て同じです。
私が18年間で積み上げてきた “絶対に外せない企画フロー”はこちら。
▼ 化粧品開発 共通フロー(18年の実務ベース)
① 市場性の確認(ニーズ)
- 本当に必要とされているか
- 代替品があるか
- 価格帯は適正か
② 商品のUSP(唯一性)の明文化
- 何がどう違うのか?
- なぜそれが必要なのか?
- 一言で説明できるか?
③ 成分・処方・剤型の確定
- 目的に合った設計
- コストと原価の妥協点
- 各成分の役割バランス
④ 容器・パッケージの選定
- 世界観に合うか
- 原価とMOQ(最小ロット)
- 取り扱いやすさ
⑤ 発売後の販売導線の設計
- 誰がどうやって知るのか?
- SNS、LP、EC、店頭の設計
- 育てるためのストーリー構築
⑥ 長期的な商品戦略
- 改善余地
- シリーズ展開
- リピートを促すコミュニケーション
まとめ:企画は「起点」で変わる。でも、育つ商品は“思想”がある。
化粧品の企画にはターゲット起点・剤型起点・商品起点という3つの方向性があります。
でも、本当に長く愛される商品には共通点があります。
それは…
“なぜその商品を作るのか”という思想が明確であること。
市場が求めているもの、
自分が提供できる価値、
実現できる技術、
そして長く使われる理由。
これが一本に繋がると、商品は育ちます。
私は18年間、自社商品・OEM商品含め、数えきれないほどの商品企画に携わってきました。
その経験から言えるのは、“目的”がブレない企画が、一番成功する。ということ。

